bolt bolt
 
BACK 2006 JUNE NEXT
Sun Mon Tue Wed Thu Fri Sat
        1 2 3
4 5 6 7 8 9 10
11 12 13 14 15 16 17
18 19 20 21 22 23 24
25 26 27 28 29 30  

bolt bolt
 
6月1日(木)
 トレーラーで事故に遭い、足をケガしていたメカニックのジェゾンが復帰! 手術を受け、まだ完治はしていない状態で、足を引きずりながらだけど、「少しでも早く現場に戻りたい」という本人の希望で、今回から復帰することになった。
 これは心強い! 彼が特に得意としているのは、ステッカー貼り。パドック用バイクも僕がステッカーを貼ってカッコ悪くなっていたが、これで一安心だ。

6月2日(金)
 イタリアGPの走行初日は、苦しいスタートとなった。このコースは高速でギャップもあり、GPサーキットの中でも一番難しいと思う。

6月3日(土)
 セットアップが順調に進み、予選までには何とかまとまってきた。予選では「何とか2列目に行けたらいいな」と思っていたが、我ながら気合いの入った走りができて、5位。途中、T1、T2区間までは、全体のベストラップを示す赤ヘルメットがモニターに表示されていて、その後の区間でバックマーカーに引っかかっての5位。モニターを見ていたスタッフたちは悔しがっていたけど、僕としては上出来だ。
 イタリアGPは土曜日からたくさんのお客さんが入っていて、サイン会なども大盛り上がり。普通に歩くのも怖いぐらいの高まり方だった。宿に帰る時も、カーラジオからはMotoGPの話題が流れてくるし、宿では「テレビで見てたわよ〜。ロッシも速かったけど、あなたも素晴らしかったわ」と言われるし……。イタリアとスペインのMotoGPの盛り上がり方は本当にスゴイ!

6月4日(日)
 決勝スターティンググリッドには、なんとあのジャコモ・アゴスチーニさんが来てくれた。チーフエンジニアのフィオさんは、アゴスチーニさんを担当していたこともある。正直、僕にとってアゴスチーニさんはあまりにも「伝説の人」。少なくとも、僕よりもグリッドガールと話している時間の方が長くて、まだまだ現役! って感じだった。
 ルマンではスタートで“いろいろ”あったので、今回は動かないことに集中。すごくいいスタートを決めることができた! 前回はスタッフにさんざん突っ込まれたので、「どうだ!」という気持ちだったが、決まった時は何も言ってくれないんだよな〜。
 最初の2周はよかったが、後はテレビでご覧の方はご存じの通り、ズルズルと後退……。サインボードの自分のポジションを見たくないような展開になってしまった。自分としては頑張っているつもりだけど、競り合いに勝つためには、もっと強力なパワーや扱いやすいエンジン特性が必要だ。その辺りのことはチームもカワサキも分かっていること。今は、少しでもセットアップを煮詰めることで弱点をカバーし、僕もライダーとしてのレベルを高めていくしかない。エンジンのことは、カワサキが考えてくれていると信じている。

ph
6月5日(月)
 悔しいレースの後だったが、気持ちを振り絞ってテスト。チームメイトのランディは腰の痛みがあるということで、代わりにオリビエ・ジャックが乗ることになった。たまたま2人同時にピットアウトして一緒に走る機会があったが、彼は相変わらず速い! 現役としては負けていられないので引き離したけど、250ccと500cc時代に一緒に競ったことを思い出す。セッティングの方向性も同じだし、心強い存在だ。

6月6日(火)
 パリ経由でアパートに帰ってきた。知り合いと連絡を取り合っていたら、公道で行われるマン島TTレースでクラッシュした前田淳選手が亡くなったことを聞いた。同じヨーロッパでレースをしているライダーとして、すごく残念だ。容態が良くなるかもしれないと聞いていただけに、本当にショックを受けた。
 今回は、石原都知事がマン島を訪れたりして、ジャンルこそ違うけど2輪レースが注目を集めていたので、僕自身、期待もしていたのだが……。本当に残念なことになってしまった。心からご冥福をお祈りします。

6月12日(月)
 ワールドカップの日本vsオーストラリア戦を見た。日本のテレビニュースなどでは「この試合はイケるんじゃないか」と言われていたので、オーストラリア人のメカニック・ジェゾンには悪いけど、「ここはまず日本の力を見せつけさせてもらうぞ」なんて思っていた。
 まず日本が1点を先制して、その後も攻められていたとはいえ、いい形の中で連携がうまくいっていたし、守備もいいし、「これは余裕があるんだな」と思っていたのだが、残り10分ぐらいでバン、バン、バンと決められてしまい、もうガックリ! ワールドカップの時期は、パドックもサッカーの話題で持ちきりになる。明日はみんなに「日本はどうしたんだ?」って言われるぞ〜。みんなに合わせる顔がないな……。
 でも、残念ではあったけどまだ可能性はある。レベルの高いヨーロッパでプレイしている日本人選手も多いし、日本のサッカーもどんどんレベルアップするはず。いつかは僕も、パドックでヨーロッパ勢にギャフンと言わせられるようになる時が来るに違いない。

6月13日(火)
 カタルニアでのレースに向けてバルセロナに移動。フランスのアパートからは600km、6時間ほどの距離なので、今回はクルマで行くことにした。

6月15日(木)
 ガウディが設計したカサ・ミラの中で、アレンネスのファッションショーが行われた。何ともすごい企画だ……。アレンネスのライダー全員での参加となった。
 オープニングに近いタイミングで、僕とランディが登場することに。プロのモデルさんたちがいる中に、短足の日本人が立体裁断のツナギで猫背気味の姿勢で現れるなんて、カッコ悪いよな〜と思っていたが、見に来ている人はレース関係者が多く、知っている顔がほとんど。ああよかった! 登場するまでの間は、同じアレンネスのタマヤンや博一くんと「どうしよう、どうしよう!」なんて心配してたけど、無事終了。いいイベントでした。
 夜は、バルセロナに来た時はいつもお世話になっている日本料理屋「旬香」に行った。ちょうどカルロス・チェカも来ていた。どうやら地元のF1テストドライバーたちもたびたび訪れたりしていて、モータースポーツ関係者の間では旬香は評判らしい。カルロスも何度か来ているそうだが、今日も「うまい、うまい」と大喜び。「今度行く時は電話してくれ!」と興奮気味で、日本人としてはちょっとうれしい。

phph
6月16日(金)
 走行初日。ムジェロと同じでなかなかセットアップが決まらない。カワサキも新しいマフラーを持ち込んでくれたりして、いろいろトライしたが、調整に追われて順位を上げるまでには至らなかった。何が原因かハッキリしないのが気がかりだ。

ph
6月17日(土)
 このトンネルは簡単には抜け出せそうになかったので、スタッフたちと相談しながら自分が一番いいと思った仕様に戻し、そこをベースにチームからアイデアをもらいながら、セッティングを進めていくことにした。
 これがなかなかうまい方向に行き、走りやすくなってきたところで予選に臨めた。予選用タイヤでもいいタイムが出せ、5番手に。もちろんフロントローを狙っていたけど、初日のことを考えればホッと一安心だ。

6月18日(日)
 朝のウォームアップ走行もまずまず。「今シーズン、ここまでのベストレースを!」という強い気持ちでレースに臨んだ。スタートはうまくいき、3番手に。前を行くロッシに食らいつくぞ、と思っていた矢先に赤旗でレースは中断となった。ピットに戻ってモニターを見たら、かなりシリアスな多重クラッシュ。赤旗を出したことはいい判断だったと思う。ただ、その後まさか自分の身に最悪の事態が起こるとは……。
 2回目のスタートの時、僕の左隣のバーミューレンがエンストした。一度レースが止まるのか、それともこのまま進行するのか、なんだかハッキリしないまま待たされ、スタートやり直しという時に、いきなりラジエターからかなりの量の水が噴き出してしまった。オーバーヒートだとすく分かったので、メカニックに伝え、マシンを交換するためにピットに戻った。
 マシンを換えると、チームもそばにいた主催者側の人も「早くグリッドに着け!」と言う。ルール上は僕がマシンを換えた時点で最後尾からスタートしなくてはいけなかったのだが、多重クラッシュやバーミューレンのエンストなどいろいろな出来事があった混乱した状況で、みんながみんな勘違いしてしまった。
 グリッドにつき、2回目のスタートはまずまずだったが、2号車はエンジン仕様がかなり違っていてうまく走れない。でも、サバイバルレースになりそうだったし、頑張って走り切れば上位も狙えそうだ。頑張って上をめざしていたら、いきなり黒旗! ルマンの時のように「何だ!?」と思いながらピットインすると、最後尾からスタートしなければならなかった、ということだった。
 ピットスルーのペナルティを受ければレースには復帰できたが、懸命に前車のスリップストリームについていたし、後ろからホンダ軍団が迫ってきている状況ではボードを見る余裕はなく、ピットスルーの指示にはまったく気付かなかった。
 2年前にも同じように最後尾スタートをしたことがあるので、冷静に判断すれば避けられた事態だと思う。難しい状況で、みんながみんな冷静ではいられなかったことが原因だ。誰の責任というわけではないが、少なくとも僕たちはこんなことでレースを落としている場合ではない。2度とこういうことが起こらないようにみんなで話し合った。
 上位進出のチャンスがありそうなレースだっただけに、余計にガックリきた。でも、連戦続きなので悔しがっているヒマがないのが、せめてもの救いかな。

6月19日(月)
 レース後、日曜日のうちにアパートに帰った。バルセロナからクレルモン・フェランまではクルマで5、6時間なので、近いといえば近い。
 でも、明日にはオランダGPのためアッセンに向かうので、今日は準備に追われた。連戦のうえ、オランダGPはいつもより1日早い土曜日に決勝が開催されるから大変だ!

6月20日(火)
 オランダに飛ぶ。ラッキーなことに、僕が住んでいるアパートから15分ぐらいの所にある小さい空港から、オランダへの直行便が飛んでいる。空港が小さいだけあってチェックインも5分ほどで済んだし、滑走路が飛行機でいっぱいで渋滞するなんてこともなく、スムーズに飛ぶことができた。こういう時は小さい空港もいいもんだ。

6月21日(水)
 アッセンに行き、改修されたコースをスクーターで下見する。コースの後半セクションは今まで通りだが、前半部分はかなり変わっていて、前半だけの印象だとまるで別のサーキットだ。
「アッセン伝統の高速コーナーがなくなってしまうのは悲しい」などなど、あまり良くない前評判を聞いていたが、確かにバックストレート手前の左回りの小さいヘアピンは、ちょっとタイトすぎるかもしれない。
 でも、安全性は格段に高まっているし、今までコースだった部分をイベントスペースにしたり駐車場にしたりといろいろ計画しているようだ。いろんな意味でレースを盛り上げるために頑張っているようなので、僕としてはそのあたりも含めて、今回の改修は高く評価したいな。

6月22日(木)
 MotoGPマシンで新コースを初走行。実際走ってみると、大きい右コーナーの1、2コーナーは結構好きだけど、その次の左ヘアピンが昨日の予想通りかなりキツい。1周目はかなり速度を落としたつもりだったのに、思わず外側の縁石に乗ってしまって「おっとっと〜」となってしまった。
 でも、走り慣れてきたら、かなり好きなコースだぞ! 多くのライダーたちの評判は相変わらずもうひとつで、「このコース、結構いいかも」と思っていたのはもしかしたら僕だけ? その理由? もちろん、今日のタイムが良かったからです。
 夜はサッカーワールドカップの日本vsブラジルを観戦。パドックはW杯ネタで持ちきりだ。我がチームのホスピタリティスタッフはブラジル人、チームのベースはドイツ、僕は日本人、なんて調子でMotoGPパドックは多国籍なので、W杯も余計にヒートアップする。みんな食事をしながら「ウチの国は今年はダメだ〜」なんてサッカー談義で盛り上がっていた。
 しかし前回の優勝国との対戦では、日本にちょっと分が悪い。今夜はホテルに帰って1人おとなしくテレビ観戦した。結果は……、う〜ん残念! ヨーロッパと日本ではサッカー文化の伝統の重みや深みが違うだろうし、まだまだ時間はかかるかもしれないが、たくさんの日本人選手がヨーロッパのクラブで活躍しているし、今後に期待かな!

6月23日(金)
 決勝に向けてのセットアップも決まってきたし、予選は一発狙うぞ! と意気込んでいた。チームも同じ気持ちでみんなの盛り上がるも十分! セッション中もずっと上位につけてたし、今回はかなり本気でポールポジションを狙っていた。
 残り5分というところで、会心のアタックラップ!「今のはイケたんじゃないか!?」という手応えもあって、コントロールラインを通過してからは「これで決勝はいいところからスタートできるし……」と、すでに明日のことを考えていた。
 ところが、走りながらコースサイドの大型スクリーンを見たら! 映ってましたよホプキンスが思いっ切りガッツポーズしているところが!! あ〜、やられてしまった……。なかなかポールポジションを取らせてもらえないなぁ。

6月24日(土)
 フロントローからのスタートはまずまず決まって、序盤は4番手を走行。気温が高かったのでフロントタイヤはハードコンパウンドをチョイスしたのだが、実はこのタイヤ、練習走行では履かなかったタイヤ。様子が分からなかったのだが、序盤はフロントが跳ね気味で前の集団に遅れをとってしまった。
 中盤には跳ねも少なくなり、ホプキンスを抜いて3番手に。あとはひたすら自分のペースで走り続けた。「このままいけば表彰台だぞ」と思うよりも、実は後ろから攻め上がってきたホンダ軍団の方が気が気じゃなかったが、まだペースアップできそうないいセッティングとタイヤチョイスができていたので、後ろとの差をコントロールすることができた。
 残り2周というところで、後ろとの差はまだ数秒あった。「これは何とかイケるかな!?」と思いつつ、最終ラップへ。最終コーナーに差しかかって「よし、表彰台だ!」というところで、いきなり砂煙が。ハッキリ見えなかったけど、黄色いマシンも見えた。
 そしてゴールした時は、僕の前に1台だけ。2位だ! 正直、僕にとって3位か2位かはそれほど重要なことじゃなかった。ずっと「表彰台に立ちたい」と言い続けていたから、ポジションよりも表彰台を獲得できてホッとしていた。つらいレースが続いていて、「早くチームのみんなと喜び合いたいな」と思っていたので、その思いがかなうのが何よりもうれしい。
 3位までのマシンを止めるパルクフェルメに入ろうとしたら、フィオがいきなり雄叫びを上げながら待っていた! ずっと支えてくれて、一番喜んでほしかった人に喜んでもらえて、すごくうれしかった。もてぎの3位から、ずいぶん時間が空いちゃったな〜と思ったけど、今回は自分たちの力で表彰台だ。
 ただ、走行初日から気になっていた新設されたヘアピン立ち上がりでのトラクション不足は解消できないままだった。パワーはあるけど、それをうまく路面に伝えられない。アクセルを開ければ滑ってしまい、コントロール性はシビアだ。あとはトップグループと変わらないところまで来ているのだが、低速コーナーでの立ち上がりが課題として残ったということは、根本的な解決には至っていない証拠。2位という結果にホッとした反面、「まだまだこれからだな〜」と気持ちを引き締めた。
 でもまあ、今日ぐらいはチームのみんなと喜び合いたい。みんなで記念撮影をしたり、シャンパンを開けたりして盛り上がった。実はこのシャンパン、ポールポジションを獲った時のために用意されたものだったらしい。出番があってよかった……。
 夜遅くになってからshinya56.comをチェックしたら、ファンの皆さんからたくさんのメッセージが寄せられていた。本当にありがとうございます! おかげで2位表彰台の余韻に浸ることができました。

6月25日(日)
 フランスのアパートに帰る。トロフィは大きすぎて持ち帰れなかったが、表彰台で開けたシャンパンのボトルをアパートに飾った。今まではトロフィやシャンパンをしょっちゅうもらっていたから飾ろうなんて思わなかったけど、最近なかなかもらえないもんで、ガラにもなくつい飾ってしまいました。

6月26日(月)
 アッセンにも来てくれたトレーナーのフィリップは若干コーフン気味。「こういうレースの後こそ大事なんだ!」と、さんざんトレーニングでしごかれた。フィリップいわく、「日々の積み重ねが大切なんだぞ」とのこと。頑張ります……。

6月27日(火)
 フランスに引っ越して以来、町の皆さんにはいろいろとお世話になっている。今日は20人ぐらいの人を招待し、クレルモン・フェランのいい街角にあるカフェでちょっとしたドリンクパーティーを催した。表彰台を獲ったらみんなを招待したいと思っていたので、絶好の機会だ。カフェではアッセンのビデオを流した。クリスチャン・サロンさんも来てくれて、「いいレースだったね」と言ってくれた。

6月28日(水)
 イギリスへ移動。いい気分でドニントンパークへ向かうつもりが、いきなりクレルモン・フェランからシャルルドゴール空港へのフライトがキャンセル……。オルリー空港まで飛び、そこからバスでシャルルドゴール空港に行くはめになった。成田に行くつもりが羽田に降ろされたようなものだ。
 さらにシャルルドゴール空港からイギリス・イーストミッドランド空港に飛ぶ予定が、何とそのフライトまでキャンセル! バーミンガム空港からバスで移動することになった。オルリーとバーミンガムを使いたくなかったから早起きしたのに! 今年はストやキャンセルが多いな〜。

6月30日(金)
 イギリスGPでは過去にあまりいい成績を残せていない。でも、前回のオランダは調子がよかったので、その勢いで走行初日からいいリズムで走ることができた。

Copyright(C) shinya56.com All rights reserved.