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4月1日(土)
 フィリップが「ミシュランの一つ星をゲットしたレストランに連れて行ってあげるよ」と誘ってくれて、僕たちの住む町からクルマで1時間半ほどの所にあるフランス料理屋さんに行った。
 ミシュランの星をとるのはかなり大変なことらしい。しかも星は永久に付けられるのではなく、剥奪されたり数が減ったりもする。そうなると一気によくないウワサが広まったりするそうだ。星をとるのも大変で、維持し続けるのも大変。料理界もなかなか厳しい世界だ。
 フィリップにシェフを紹介してもらうと、「レースの話も聞かせてほしい」とのことで、いろいろと話し合った。厨房にも入れてもらったが、さすがにキレイにしている。もちろん味は素晴らしいし、芸術的センスもバッチリ。すごく貴重な体験だった。
 フィリップには事前に「ミシュランのレストランに連れて行ってあげるってことは……、分かってるよな?」と言われ、今週は連日ハードトレーニングを重ねてきた。そのおかげで一つ星レストランのフランス料理にありつけたけど、あまりにトレーニングがハードだったせいか、現在風邪気味です。
 それにしても、フレンチもいいけどそろそろ“某”日本食も恋しくなってきた。牛肉の輸入再開はまだか!?

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4月3日(月)
 本当は明日、カタールに向かう予定だったけど、フランスのストは続いている様子。余裕をみて今日のうちに出発します。

4月4日(火)
 夜、カタールに到着。レンタカーオフィスで手続きする。国によって、テキパキと事務処理してすぐ手続きが終わる時もあれば、ものすごく時間がかかる時もある。
 たまたまそういう人に当たったのか、お国柄なのか分からないけど、カタールはとにかくスゴかった。「何でこの作業にこんなに時間がかかるの!?」というぐらいのんびりしていてい、1人のお客さんをさばくのに30分ぐらいかかっていた。すごい……。
 そうこうしているうちにドイツからのフライトも到着。チームのハラルドとウゴに会えた。道が分からないので、2人と一緒にホテルに直行した。

4月5日(水)
 サーキット入り。開催時期が早いせいか、暑くない! といっても気温は30℃弱あるのだが、カラッとして過ごしやすい。朝夕なんかは肌寒いぐらいだ。せっかくアンダーアーマーの激暑対応インナースーツを持ってきたから、ライバルに差をつけるチャンスだったのに……!!

4月6日(木)
 走行開始。砂漠の中のサーキットなので、走行初日ということもあってコース上の砂がスゴイかと思っていたら、他にも結構多くのレースが開催されているらしく、わりといいコンディションの中、走り始めることができた。
 そのわりには、タイムが伸びない。思ったように曲がってくれないわ、アクセルを開ければ滑るわで、走りづらくてかなわない。どうにも気持ちよく走れないまま終わってしまった。

4月7日(金)
 セットアップを変えて2日目に臨む。走りづらさは変わらず、トップとの差も大きい。ありとあらゆる方法を試したのに、打つ手がなくなって苦しい状況だ。ウインターテストは調子がよかったし、開幕戦のヘレスでも光が見えていただけに、余計原因が分からない。それでも予選は何とか9位。3列目に滑り込むことができた。
 ただ、レースセットアップのまま予選用タイヤを履いたら、2秒もタイムアップしている。通常のタイムアップ幅は1秒程度のはずなので、逆に言えば、レースセットアップが何かおかしいということ。がっくりと落ち込んでしまった。
 でも今回は、今年からスポンサーになってくれたマイタンの社長と社員の方が、2人で完成したフィギュアと携帯ストラップを携え(WEBSHOP で発売中です!)、遠路はるばるカタールまで応援に来てくれた。
 海外のGPは初観戦ということだったので、「それにしても何でまたカタールなんですか!?」と思わず聞いてしまったが、「ヨーロッパはだいたい想像がつくし、普通じゃ味わえないレースを見たい」ということらしい。うーむ、やはり成功者はどこか違う……。
 でも、カタールは街もあまりに何もないし、サーキットにも数百人ぐらいしか人がいない現実を目の当たりして、さすがにちょっと驚いていた。

4月8日(土)
 風が強い! 決勝のグリッドでは、隣でカサを差してくれているアンブレラガールに「無理しなくていいよ」とカサを畳んでもらったほどだ。
 エンジンとクラッチのフィーリングがよく、事前のスタート練習はうまくいった。そしていざ本番のレーススタート! 案の定スタートが決まり、1コーナーには4、5番手ぐらいまでポジションアップできた。でもその後、混戦の中での加速競争に置いて行かれて、1、2周の間にだいぶポジションを落としてしまった。
 決勝は風が強いせいでマシンの機嫌も悪かったのか、その後もズルズルと順位を下げていく。しまいにはケニーにまで抜かれてしまった。それがまたあまりにも悔しい! このまま終わったら何も得るものがないレースになってしまう。「カタールまで来てこのまま帰れるか!」と気合いを入れ直してケニーの真後ろまで迫り、最終ラップでベストタイムをマークした。
 きっとチームのみんなは「今頃ベストタイム出してるんじゃないよ」なんて思ってただろうな……。でも僕なりのささやかな抵抗を見せたつもりです。

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4月9日(日)
 朝のフライトでパリに向い、クレルモン・フェランに戻った。

4月10日(月)
 カタールから帰ってきた翌日だというのに、トレーナーのフィリップ先生はやる気まんまん!「昼からは1時間のウェイトトレーニングだ。よーしいくぞー!」みたいな感じで連れ出された。
 夕方になると「ロッククライミングの予約をしてあるんだけど、来るか!?」と言われたが、来るかったって、予約してあるんじゃ行くしかないじゃん! 行ってみるといきなりハーネスを付けられ、本格的なロッククライミングにビックリ。室内では簡単な方からレベル1〜9まで設定されているらしく、僕は6まで行ったところで落ちてしまった。最初だから力が入ったこともあるけど、これは握力と腕力が必要そうだぞ〜。

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4月13日(木)
 天気はいいし、フィリップは仕事でパリに行ってしまったし、マネージャーの関さんも日本に帰国しているしで、フィリップの彼女のイザベルとゴルフレッスンに行ってきた。これもこれで数えるぐらいしかやったことがないシロウトだけど、テニスよりは素質あるかも……!
 ゴルフの先生はジョークひとつ言わないマジメさで、ものすごいフランス訛りの英語で「シンヤ、ノーグ〜ッド」なんて言わてしまうけど、的確にアドバイスしてくれるいい先生だ。イザベルは細かいことを気にせずバンバン打ちまくるタイプ。一度、先生が目の前を通った瞬間にスイングして、先生のおしりに思いっ切りボールをブチ当てていた。もちろん先生は表情ひとつ変えずに「危ないぞ」。さすがだ……。
 今日はショートコースを3ホール回り、基本を教えてもらった。ゴルフはちょっとしたグリップの握り方で崩れてしまったりして、精神的にもすごくタフなスポーツだ。テニスやロッククライミングも頑張って続けていきたいが、せっかくブリヂストンのタイヤを履いているからには、ゴルフで宮里藍選手をめざすかな!?
 ところで、もうご存じの方も多いと思いますが、日刊スポーツのサイトでblogを始めています。blogでは、レースウィークを中心とした近況を、こちらの日記では細かな日々の出来事をお知らせしていきますので、両方読んでもらえると、より詳しくグランプリ生活について知ってもらえると思います。日記もblogも、よろしくお願いします!

4月15日(土)
 明日はイースター。みんな休日ということで、イザベルの家族が所有しているという別荘に行くことになった。クレルモン・フェランに近い場所にあるのだが、到着してみてビックリ! 当たり前のようにプールがあって、それだけならともかく「まさかあの池は……?」と聞いてみると、「ああ、あれもウチのよ」…………。
「山の中だし、そんなに高くないよ」という話だったし、日本と比べれば土地が安いのは確かだろうけど、とは言ってもねぇ。僕が泊まったのは池のほとりの山小屋みたいな建物で、外観を見た時はちょっとビビッたけど、中はちゃんとテラコッタタイルが敷いてあったりシャワーもあったりして、こちらも立派だった。
 別荘の地下にはワインカーヴがあって、無造作にワインが置いてある。「好きなのを持っておいで」とカゴを渡されたけど、カゴを片手にワインを選んでると、何だか花摘みをしているような気分になってくる。いずれにしてもこの別荘、日本とはケタ違いだ。

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4月16日(日)
 みんなにとってホリデーでも、僕にとってはホリデーではない。朝からフィリップに「よし、山行くぞ!」と引きずり出されて小1時間走り、別荘に戻るやいなや「大リーガー養成ギブスかよ!」と突っ込みたくなるような筋トレ用のゴムでさんざんしばかれた。
 さすがに午後には休みを与えられ、敷地内の池で釣りをした。どうやらニジマスなんかがいるらしい。ロッドやルアーを借りたけど、これがまた低クオリティ! 針先なんか丸まってて、こんなので釣られる魚はよっぽどのん気でスレてないんだろう。結局釣れなかったけど、日本製の釣り道具を持ってくれば、池の魚を根こそぎ釣ってしまえそうだ。

4月21日(金)
 ニッカンスポーツのblogにも書いたけど、クリスチャン・サロンさんに誘われて彼の経営するカートコースに行ってきた。モタードマシンもあって、「お、誰か来てるのかな」と思いつつ見ると、なんとボリス・シャンボンが! すげ〜! 今週末のレースに向けて、練習に来ていたようだ。
「カートで速く走りたいな」と思っていると、サロンさんが「シンヤ、空き時間が30分あるからカートに乗っていいぞ」。さっそく走り出すと、なんとシャンボンとの混走だった。僕が乗っていたのは4スト250ccマシンで、これがまためちゃくちゃ速い! 完全にコントロール不能という感じだったが、それでもシャンボンとの差は広がらない。
「うーん、やっぱり4輪の方が速いのか」と思っていたが、どうも彼は本気ではなかったらしい。攻め始めたらあっという間にブチ抜かれてしまった。シャンボンの走りは、テールスライドしっ放しで、まるでリヤタイヤが付いていないみたいだった。
 その後、サロンさんが「2人乗りカートに乗ってみないか?」と誘われ、サロンさん運転の2人乗りカートに乗ることに。これが2スト250ccエンジンを搭載していて、とにかく振動がスゴイ! シートの背中にダイレクトに伝わってくるエンジンの振動と、サスのないカートの走行中の振動とが重なって、どうにもむせてしまう。1周しただけで「風邪がぶり返したか?」と思うほどむせて、2周目にはますますひどくなり、しまいには吐きそうになって「頼むから止めてくださいー」。緊急ピットインしてもらった。サロンさんに「あのう、むせちゃってダメなんですけど」と言うと、「まだタイヤを暖めてるだけだったのに。シンヤ、おまえMotoGPライダーだろう?」と笑われてしまった。
 次にイザベルが試乗したら僕とまったく同じようにむせてしまい、「もう1周してたら間違いなく吐いてたわ」とコメント。続けてシャンボンも乗ってみることになった。「これで彼もむせるようなら、僕の問題じゃないぞ」と見ていたら、やっぱりむせて吐きそうになって2周ほどでピットに戻ってきた。
 サロンさんはニヤニヤしながら「なんだ、みんな弱いな」。どうもむせるのを知ってて楽しんでいたらしい。サロンさんにはやられっぱなしです。

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4月22日(土)
 クレルモン・フェランから1時間ほどのところで、シャンボンも出場するレースが行われると聞いていたので、さっそく見に行ってみた。レースはフランス国内選手権。「国内」とは言っても、フランスのモタードはかなりレベルが高いそうだ。
 コースはサーキットではなく、駐車場にパイロンを置いたオンロードと、ダートコースが半々。あまり路面状況がよくないようで、派手なスライドは見られなかったが、プロのモタードライダーたちの走りに刺激を受けた。

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4月23日(日)
 フィリップとイザベルが、イザベルの自宅に友人を招いてバーベキューをするということで、お呼ばれして行ってきた。トレーニングしてもらったうえに、こうしてたびたび食事も用意してもらって、ホームステイ状態だ。いつもお世話になってます!

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4月25日(火)
 パリで1泊。明日、朝のフライトでイスタンブールに向かう。どうやらフランス国内のストは収束したみたいだ。

4月26日(水)
 朝のうちにパリを出発して、トルコに向かう。直行便は意外と近くて、フライトは3時間半ほどと非常に快適だ。
 去年のトルコで、大渋滞に巻き込まれたり道がよく分からなかったりレンタカーを借りる時の手際がものすごく悪かったり周囲の運転があまりに激しかったりと、うんざりしたことを教訓に、今年は空港からホテルまでタクシーで行き、ホテルでレンタカーを借りることにしていた。
 余計な心配がいらなかったのはよかったが、やっぱり橋の混雑はすさまじく、ホテルに着くまでに2時間ほどかかってしまった。まったくもう!

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4月27日(木)
 今回のレースはフィリップが来てくれた。トレーナーの彼は、シーズン中半分ぐらいのレースに来てくれることになっている。さっそくランニングでコースを1周。イスタンブールサーキットはアップダウンがスゴイので、さすがのフィリップ先生も「すごいコースだな……」「シンヤ、ゴールはまだか!?」「あとどれぐらいなんだ?」と若干弱音!? 先生、まだコースの1/3ですよ!

4月28日(金)
 走行初日。何とかここで流れを変えたいので、前日からスタッフと念入りにミーティングを重ねてセッションに臨んだ。でも、走り出してみると何だか走りにくく、思いっ切り攻め込めていない感触がある。案の定タイムも伸びず、初日から苦戦模様となってしまった。
 問題点を解決するためにチームが持ってきてくれた、いろいろなパーツを試しながらの走行。崩れてしまったリズムを、何とかウインターテストの時の状態まで戻したい。

4月29日(土)
 1日雨で、予選もウエット。高速コースのウエットコンディションは、どこまで攻めていいのか分かりづらく、最初は戸惑った。でも、そこそこペースがつかめてからは、「結構雨もいいじゃん!」。ドライで問題になっているトラクション不足はウエットでも発生してしまうが、タイヤのパフォーマンスにも助けられて、何とか形にはなった。
 それにしても予選が1セッションだけになってから、ウエットは初めてじゃないかな? 何しろ一発で決まるから、これがまたすごく難しい。予選用タイヤを使うわけでもないし、どうしても探りながらの走行になるので、「これでいい!」という限界点が見えにくい。おまけに誰がどのタイミングでどんなタイムを出してくるかも分からないので、1時間フルに集中し続けなければならない。そんな中で、路面状況を確かめつつギリギリまでタイムを詰めていく。
 今回はサインボードの文字の色が変わり、これがまた全然見えない! セッション終盤、チームとしては「そろそろ給油しないと」とピットインのサインを出していたようだが、僕は雨の予選に集中していたし、「どうせ今回のサインボードは見えないから、いらねえ! 見ねえ!」と、走行続行。チームは「ガソリンがなくなる〜」と大あわてだったようだが、何とか7、8周の走行を走り切り、チェッカーを受けてから半周ほどでガス欠ストップとなった。スタッフをやきもきさせたけど、僕としても原油価格の高騰を意識しながら気を使った走行をしたつもり……というのはウソで、すいません僕のミスでした。
 ポジションも何も分からずピットに戻ると、チームスタッフが「まぁまぁかな。8位ならギリギリ3列目だしね」と言ってくれたので、ホッと一安心した。

4月30日(日)
 どんよりした曇り空で、いつ雨が降ってもおかしくない空模様。ドライでの走行になったが、初日のフィーリングはよくなかったし、今朝のウォームアップ走行でもぱっとせず、いろいろトライはしたが不安を残したまま決勝を迎えることになってしまった。
 こうなったら、自分の力を信じて行くしかない。僕はテストライダーじゃないから、セッティングばかり気にしていても仕方がない。チームも賛同してくれたし、決勝は自分の好きな仕様で走ることにした。
 レース序盤は周りのライダーとのバトルになり、ペースが上がらない。前に逃げられて、歯がゆい展開となった。自分としては余裕があり、もう少しペースアップしても最後までいけそうだ。中盤から後半にかけてみんなペースが落ちてきて、前にいるヤマハのコーリンにも近づいてきた。「これは抜くしかない!」と気合いを入れ直し、彼をパスして8位でゴールした。
「難しい状況の中でも頑張ったね」とチームが評価してくれたが、まさにその通り。調子が悪かったなりにもベストは尽くせたと思う。でも、僕自身もファンの方たちも、求めている結果はこんなものじゃない。まだシーズンは始まったばかり。絶対に諦めない!

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