レーシングライダーの生活をお伝えします
1月1日(日)
 明けましておめでとうございます。今年もこのHPをよろしくお願いします。
 年越しそばを食べ、年が明けてからは毎年恒例となっている近所の神社での初詣。1年間の安全祈願をした。
 そして今年もまた、近所のトレーニングセンターで行われている超ショートマラソンに参加。去年は運動部の学生さんや、中には陸上部っぽい人までいてまったく歯が立たなかったが、今年の参加者はほとんどが子供。ちょっと張り合いがなかった。

1月4日(水)
 千葉・茂原ツインサーキットの社長に声をかけていただき、バイクの走行会を見に行った。以前の茂原はミニバイクコースとモトクロスコースがあった。現在はモトクロスコースがなくなり、その跡地に4輪と2輪が走れる全長1.2kmの東コースができ、ミニバイクコースが西コースとなっている。様子は少し変わっていたけど、ミニバイク時代にお世話になった、僕にとっては思い出深いサーキットだ。
 国内のバイクレースは下火になっていると聞いていたので、「どんな様子かな」と心配しつつ茂原に着くと、ツナギを着たライダーたちがたくさんいる。中にはタイヤウォーマーを装着してガンガン走っている人もいて、うれしくなってしまった。昔ミニバイクレースで一緒に戦った選手や、小・中・高と同級生だった懐かしい友達とも会えたのも楽しかったな〜。
 今年の8月は、ここ茂原の西コースでポケバイ全日本選手権・中野真矢杯を行う予定。子供たちには、いろんなサーキットで学んでもらえたらいいなと思う。特に茂原は設備も素晴らしいので、いい刺激になるんじゃないかな。

1月6日(金)
 読売新聞・日曜版の取材を受ける。自分の愛車を紹介してくれるコーナーだそうだ。昨日のうちからクルマをピカピカに洗車して準備したけど、よく考えたら点々が見える新聞の写真なんだから、そこまでツヤツヤさせなくてもよかったかな……。インタビューではMotoGPの紹介と、日本にいる時にどうカーライフを楽しんでいるかなどを話した。
 午後は、レースファンの皆さんにはおなじみのサイクルサウンズ誌の取材。今度は専門誌なので突っ込んだ話をする。今季にかける意気込みを語ったので、楽しみにしていてください。

1月9日(月)
 フィリップ先生日本上陸! 今日から6日間の冬季トレーニングキャンプだ。正月のお餅もお腹にたまったところだし、ちょうどいいタイミングで見張り役が来てくれたからには頑張らなくちゃ!
 以前は東京や千葉でトレーニングしていたが、「たまには場所を変えよう」と、今回の舞台は横浜。みなとみらいのホテル内のトレーニング施設や周辺の公園などで汗を流す予定だ。

1月10日(火)
 今夜はジャンクスポーツの収録。1年ぶりぐらいの出演だ。今回はモータースポーツの選手はいなくて、野球選手がほとんど。いやー、みんな面白いッスね〜!「この人たち、本業はタレントなんじゃないの!?」というぐらいテレビ慣れしてて、圧倒されてしまう。でも、バイクの映像が流れると「コイツ、ちっこいけど変わったことやってんなぁ」とは思ってもらえたみたいだ。
 ジャンクスポーツの収録は、事前にテーマに沿った簡単なヒアリングがあり、大まかな流れは分かるけど、どんな質問が飛んでくるかはハッキリと知らされない。それどころかリハーサルも特になく、席に着いたと同時に収録開始! もうビックリだ。
 こういう番組ならではのやり方なのか、浜ちゃんのスタイルなのか分からないけど、最初はいきなりの収録開始に冗談だと思った。今は何度か出演して進行が分かってきてはいるけど、スタジオ内にはたくさんのスタッフや関係者がいて、やっぱり結構プレッシャーがかかる。去年の年末に中学校で何百人かの前で講演したので、「あれよりはラクなはずだ〜」と自分に言い聞かせたおかげか、結構楽しめた。……実はトレーニング後でへとへとだったけど。

1月13日(金)
 横浜から千葉へ移動し、家からも近い日本エアロビクスセンターでトレーニング。最初は「エアロビか〜、ちょっと恥ずかしいなあ」なんて思ってたけど、実はいろんな競技のオリンピック選手たちが利用するような素晴らしい施設。屋外400mトラックや室内200mトラック、トレーニングジムに屋内プールと至れり尽くせりで、外国人アスリートが調整に使ったりもするらしい。
 あいにく雨だったけど、フィリップ先生は「よし、予定通り外でトレーニングだ!」と気合い十分。「僕も雨でうれしいよ!」と応えると、「うむ、その気持ちが大切だ!」とうれしそう。だいぶ先生の心をつかむ返事ができるようになったぞ。

1月14日(土)
 トレーニング最終日。さすがに毎日みっちりというわけにはいかず、疲労度合いに合わせて調整しながらだったけど、何とか乗り切れた。
 ……なんていう僕を横目に、日本エアロビクスセンターには1日中走り続けている人が! どうも強化選手らしきマラソンランナーで、屋外トラックで走っていたと思ったら屋内トラックで走り始め、「これで休憩かな」と見ていると今度はランニングマシンで走り……とまさに走りまくり状態。きっと彼らにしか分からない世界があるんだろうけど、長距離走が苦手な僕としては、正直「この人はいったい何が楽しいのかな」と思ってしまった。やっぱり屋内、屋外、マシンで気分を変えてるのかな……。でも、そういう人もサーキットに来たら「何が楽しくてバイクであんなスピードで走ってるんだか」と思うんだろうな。

1月15日(日)
 フィリップを成田まで見送る。これでトレーニングキャンプの全日程が終了。トレーニングの基本を改めて教えてもらうこともでき、マレーシアのテスト前にいい運動にもなり、充実のキャンプだった。あとはこれを繰り返していかないといけないんだよなぁ。

1月16日(月)
 午前中はミスターバイク誌の取材。今シーズンの抱負や目標を語るインタビューと、ガレージで愛車とともに撮影してもらった。
 午後から茂原ツインサーキットに行き、モタードに乗る。整備をお願いしていた近所のMDモーターサイクルスさんは、昨夜かなり遅くまでかかってメンテナンスしてくれたようで、本当に申し訳ありませんでした。何しろバイクが準備されているのに慣れすぎてしまい、今じゃ自分でタイヤ交換すらしなくなっちゃったので……。
 茂原は小雨模様。路面はウェットというコンディションで、数周で切り上げることにした。テレビで見るモタード選手のようには滑らせられなかったけど、バイクに乗る感覚を取り戻すのが目的だったし、それなりに楽しめた。

1月21日(土)
 今年最初のテストが行われる、マレーシア・セパンに向けて出発。幸先よく行きたい…ところだったのだが……。なんと雪。「でもまぁ、大丈夫だろう」と思いつつ空港に着いたら、何だか雰囲気がおかしい。出発の2時間前になってもチェックインカウンターが開いていない。
 少し遅れて午後1時頃にチェックインすると、「遅れていますが、搭乗ゲートでお待ちください」というアナウンス。でもゲートへは入れず、「あと1時間後に」と言われて待ち、1時間経つと「あと1時間後に」とアナウンスが流れる。いったいどうなるんだ!?
「しょうがないか」と本を読んだりして待っていたが、午後4時頃になっても状況が変わらない。さすがに「どうなってるの!?」と思い、空港職員の人に聞くと、「機体の雪を取り除く機械の順番待ちなんです。1機体あたり1時間ぐらいかかるんですが、まだ5機ぐらい待っているので、5時間後ぐらいにはなると思いますよ」とこっそり教えてくれた。
 それを聞いた時は、ちょっと怒りが込み上げてきた。こうして飛行機が大幅に遅れる時、よくカウンターの人を怒鳴りつけているような人を見かけるけど、「自然相手のことだし、しょうがないじゃん。大人げないな〜」なんて思っていた。
 でも、職員の人がこっそり教えてくれた話を聞いた時は、「そうならそうと先にハッキリ言ってくれたらいいのに!」と怒りたくなった。食ってかかりはしなかったけど……。
 さらにビックリしたのは、空港への入場制限も何もなく、「もしかしたら飛ぶのかも」と期待させるようなアナウンスばかり流すものだから、空港内は大混雑! 人であふれかえっているので、「ラウンジで休むか」と行ってみると、ラウンジもフル満タンで床に人が座っているような状態。こりゃダメだ……。
 仕方なく、ただブラブラと過ごしているうちに、晩飯の時間になった。が、どの店もとてつもなく混んでいる。かといって、売店のパンやおにぎりも全部売り切れていたので、マネージャーの関さんとレストランの順番待ちで並ぶことにした。
 8時半頃から9時近くまで並び、もうすぐというところで何と営業終了! こんな非常事態になんだよー! 実際の営業時間より30分は延長していたようで、その気持ちは分からないでもないけど、せめてもう少し営業を! 何か食べさせて! それにしても目の前で「はい、ここまで」と言われた人は、もっとかわいそうだよな……。
 結局飛行機が飛んだのは、夜中の1時を回っていたと思う。回ってなかったかな? 思い出せないし、思い出したくもない。途中、カワサキのテストライダーを務めてくれる松戸直樹さんと会ったが、直樹さんは昼過ぎ頃から機内に閉じこめられていたそうだ。まったくもう! GPライダーになって以来初めての、大変な1日だった。

1月22日(日)
 近いはずのマレーシアに到着した時は、もうヘロヘロ……。1日余裕をもたせたスケジュールだったからよかったものの、そうじゃなかったら本当に大変だった。
 ヘロヘロ状態でサーキットに着き、さっそくみんなに苦労話をしたが、スタッフはテストに向けて気合いが入っているらしく、「あぁ、そっか」と軽〜く聞き流されました。

1月23日(月)
 マレーシアテスト初日。年末にテストしたプロトタイプをベースに、すべてのパーツを組み上げたまったくの新車をシェイクダウンする。去年型よりも運動性能が上がり、ハンドリングが軽快になっているところがいい。エンジンも、現時点で去年と同じパフォーマンスを見せているので、これからのチューニングでさらにパフォーマンスが高められそうだ。

1月24日(火)
 初日に引き続き、動作チェックを中心に走行。バランスも取れてきているので、明日は本格的に走れそうだ。

1月25日(水)
 タイヤテストでいいタイヤが見つかったので、レースディスタンスを走ってみることに。この時期に決勝レースさながらのシミュレーションができるのは、結構順調にきていることの証拠だ。
 決勝を想定しながら「まずまずのペースかな」と思いつつ走っていると、「-1 CAPI」なんてサインボードが出された。「またもうふざけて!『タイムが落ちてきたから頑張れ』ってことだな!?」と、1人でヘルメットの中で笑っていたのだが、後で聞いたら、去年の優勝タイムとの比較だったらしい。
 残り6周というところで燃料計の警告が出てピットインしたが、そのままのペースで走っていたら、去年の優勝タイムと同じか上回れたようだ。「うんうん、悪くないぞ」と充実感に浸っていたら、途中でコーリンに抜かれたことを思い出した。聞いてみると、彼は去年の優勝タイムを10秒以上更新したらしい。うーん……。一気に醒めてしまったじゃないか……。
 夜のうちに日本に向けて出発した。

1月28日(土)
 日本に帰ったと思ったら、今度はオーストラリアへ。夜のフライトでメルボルンへ向けて出発。今度は何事もありませんでした。

1月29日(日)
 朝、メルボルンに到着。レンタカーでフィリップアイランドに向かう。毎年のように道を間違えてるけど、今年は迷わず着くことができた。
 オーストラリアは夏。オージーのように短パン・Tシャツで過ごそうと思ったが、実際は意外と寒く、長袖が必要だった。

1月30日(月)
 フィリップアイランドサーキットの隣にカートコースがあると聞き、さっそく行ってみると、チームメイトのランディと、その友達のスーパーモタード元チャンピオンが来ていた。
「一緒にやろうよ!」と声をかけ、カートを楽しむことに。おかしいことに、コースレイアウトがフィリップアイランドサーキットとまったく同じになっている! 精密なミニチュアみたいな感じで、アップダウンまで似せてあったのにはビックリした。
 みんなすごく速い! 特にモタードの元チャンピオンはさすがにドライビングが激しい。幸い僕のカートは速くて、かなり調子よく快調に走れたけど、いつ追突されるかとヒヤヒヤものだった。

1月31日(火)
 オーストラリアテスト初日。この時期にフィリップアイランドでテストするのは数年ぶりだ。ここは'98年にはワイルドカード参戦した思い出があるし、もともと好きなコースだ。それなのに去年はなぜか苦戦。決勝順位はまずまずだったけど、好きなコースで思い通り走れず、かなりの自己嫌悪に陥っていた。「今年は何か変えなきゃ」と目標を持ってテストに臨む。
 そのかいあってか、初日から結構気持ちよく走ることができた。何を変えたってわけじゃないけど、この調子だと落ち着いて3日間のテストをこなせそうだ。ブリヂストンがフィリップアイランドに合わせたタイヤを持ち込んでくれたおかげもあるのかな。これなら自信を持って走れるぞ!